日本財団 図書館


 

しました。
私自身も強くなりました。電車やバスの中で、「あっ、あの子は」とか「大変だろうね」と、陰口をいっているのを耳にしたときは、悔しくて辛い気持ちにもなりました。それでも息子には、「周りの人たちに迷惑をかけないで生きて欲しい」と思い育てました。
息子は気が弱く自分の殻に入って、なかなか気持ちを言わない性格なので困りました。必要なことだけしか話してくれません。そのために学校であったことなど、わからないことが多くありました。
体も弱くて休んだりしていたので勉強も遅れました。でも中学部に上がってからは、家にも一人で帰ってくるようになり、運動をするようになって体力もつき休まなくなりました。
中学の卒業間近のことです。息子の頭に先輩が回したベルトが当たりました。検査の結果、「聴力が落ちている」と言われ本人が、「頭が痛い」と言い心配しました。
盛岡の市立病院に一ヵ月ほど入院し、医大へも通ってどうにか聴力が戻りました。
入院中に高等部への入試がありました。学校や病院のご配慮で病院の中で試験が受けられました。高等部では運動や勉強に忙しい毎日を送り、無事に卒業することができました。
いよいよ社会人です。給食のパンやご飯、菓子をつくる本人の好きな職業に就くことができて助かりました。学校でも冬休み前に自動車の運転免許を取る準備をしてくれ、本人も頑張って学校と自動車学校に通い、社会人になって六月に免許証を取ることができました。本人はもちろん周りの人たちみんなが喜んでくれました。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION